間葉系幹細胞のがん細胞に対する影響
間葉系幹細胞は肺がん細胞H1299のアポトーシスを促すことで増殖を抑制することが培養実験で分かっています。
動物実験では間葉系幹細胞はカボシ肉腫細胞のアポトーシスを誘導しました。
また、マウスを使った動物実験で間葉系幹細胞はインターフェロンを発現させることにより肝がんの増殖を抑制したとの報告があります。
これら報告は間葉系幹細胞ががん組織に対して抑制効果がある可能性を示しています。
また、間葉系幹細胞はがん細胞あるいはその微小環境に対して制がんとしてのキャリア細胞として使える可能性も示唆されています。
しかし、間葉系幹細胞ががん組織の縮小や消滅に関与したという臨床報告は現時点ではありません。
腫瘍部位では急速ながん細胞増殖による酸素や栄養不足になります。そこで、腫瘍細胞は血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を分泌して血管新生を行います。
間葉系幹細胞は腫瘍部位に集積して血管内皮細胞の分化あるいはVEGFおよび Angiopretin-1などの血管新生を誘導する因子を分泌します。
その結果、がん組織部位に間葉系幹細胞が集積し、微小循環を構築し、がん組織の増殖を促すと考えます。
また、間葉系幹細胞は乳がん細胞の増殖・転移能を亢進させるとの報告もあります。
これらのことは、間葉系幹細胞の抗がん効果が認められた実験結果がありますが、全体的にはがん組織の増殖・転移能を促進させることを示したものが多いのが現状です。
青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範
参考文献
1) Khakoo AY, Pati S, Anderson SA, et al. Human mesenchymal stem cells exert potent antitumorigenic effects in a model of Kaposi’s sarcoma. J Exp Med. 2006; 203:1235 1247.
2) Junttila MR, de Sauvage FJ. Influence of tumour micro environment heterogeneity on therapeutic response.Nature. 2013; 501: 346-354.
3) Papaccio F, Paino F, Regad T, et al. Concise review: Cancer cells, cancer stem cells, and mesenchymal stem cells: Influence in cancer development. Stem Cells Transl Med. 2017; 6: 2115-2125.
4)国際抗老化再生医療学会雑誌 第1号(1-20)2018 間葉系幹細胞による治療と抗老化 佐藤茂 劉效蘭
プロフィール

- 青山メディカルクリニック 院長
- 近畿大学医学部卒業。慶應義塾大学病院形成外科入局し、佐野厚生総合病院形成外科へ。その後、横浜市立市民病院形成外科として務める。埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科を経て、銀座美容外科クリニック新宿院院長として従事する。その後、青山メディカルクリニック開設し、今に至る。
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