がんの内部に存在する細菌が転移を促進することが判明

がんの内部に存在する細菌が転移を促進することが判明しました。

がん内部の細菌が転移に関係していることを調べた研究が学術雑誌Cellに掲載されました。

多くの症例でがん組織から様々な種類の細菌が検出され、特に乳癌や膵癌はがん組織内部から細菌が検出される割合が高いことが分かっていましたが、今回がん内部に細菌が侵入すると転移しやすくなることが判明しました。

がん細胞は転移するために血管内に侵入しようとしますが、通常は血管内に侵入する際に機械的な圧力のストレスでがん細胞は死滅してしまいます。しかし、細菌が侵入したがん細胞はアクチン細胞骨格を再編成することによって、圧力に対する耐性を強化し、がん細胞が死滅せずに血管内に侵入することができるようになります。つまりがん内部の細菌ががん細胞が死滅せずに転移ができるようにサポートしているのです。

乳癌マウスを使用した実験では、腫瘍内細菌が少ないと原発腫瘍の成長に関係なく肺転移が有意に減少し、逆に腫瘍内細菌を腫瘍内部に投与すると転移が促進されることがわかりました。

以上のことからがん内部に存在する細菌が癌転移の促進に重要な役割を担っていることが示唆されます。

今後腫瘍内細菌に対する治療の開発が期待されます。

 

青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範

参考文献
Tumor-resident intracellular microbiota promotes metastatic colonization in breast cancer.Fu A, Yao B, Dong T, Chen Y, Yao J, Liu Y, Li H, Bai H, Liu X, Zhang Y, Wang C, Guo Y, Li N, Cai S.Cell. 2022 Apr 14;185(8):1356-1372.e26. doi: 10.1016/j.cell.2022.02.027. Epub 2022 Apr 7.PMID: 35395179

プロフィール

松澤 宗範
松澤 宗範青山メディカルクリニック 院長
近畿大学医学部卒業。慶應義塾大学病院形成外科入局し、佐野厚生総合病院形成外科へ。その後、横浜市立市民病院形成外科として務める。埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科を経て、銀座美容外科クリニック新宿院院長として従事する。その後、青山メディカルクリニック開設し、今に至る。