加齢とサイトカインの関係

私たちの体は多くの生理活性物質によって調整されています。

代表的なのはホルモンですが、ホルモン以外にも細胞から生理活性をもつペプチドが分泌されていることが明らかになり、これらのペプチドはサイトカインと呼ばれています。

サイトカインの種類は1980年代では、インターフェロン、インターロイキン (IL)、TNF、 TGFなどの数種類しかわかっていませんでしたが、今ではILだけでもIL-39まで知られています。そのなかでTNF、IL-1、IL-2、IL-6などは, 炎症反応に重要な役割を担うことがわかっており炎症性サイトカインと呼ばれています。一方、IL-1receptor antagonist (IL-1Ra)、IL-4、IL-10、TGF-β1などは炎症反応を抑制し、抗炎症性サイトカインと呼ばれています。

一般に炎症は感染や組織損傷に対する急性反応で病原体の除去や傷の修復に重要です。しかし、高齢者では、原因がないにもかかわらず軽度の炎症が持続することがあります。そして高齢者では炎症性サイトカインであるTNFやIL-1、IL-6がわずかながら上昇します。抗炎症性サイトカインのIL-10 、IL-1Raなども増加しますが、バランスとしては炎症性に傾くとされています。

健康な高齢者ではサイトカインの変化は少ないことが知られており、軽度慢性炎症は高齢者の健康状態の指標になるとも言われています。

例えば、炎症性サイトカインのIL-6は年齢と相関しますが、健康状態のよい高齢者の集団の血中IL-6値は、一般高齢者の集団に比して有意に低いことが観察されています。

また、高齢者では、リンパ球活性化の指標とされる血中可溶性IL-2受容体が増加し、IL-2産生能が低下していることから、サイトカインによる慢性的な刺激によりリンパ球が常に活性化し疲弊してしまうのではないかと推測されています。

この加齢によるサイトカインの増加には、いくつかの要因が関与しているとされており、内臓肥満や喫煙などの長年の生活習慣に加えて、無症候性の感染やテストステロン、エストロゲン、DHEAなどの性ホルモンの減少など、内分泌代謝の変化も関与している可能性があげられています。

 

青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範

 

参考文献:

1) Kawakami M. Discovery of tumor necrosis fac-tor (TNF) and identification of the potentialof anti-TNF antibodies in Dr. Cerami’s laboratory. Mol Med. 2014: 20 Suppl 1 (Suppl 1):S17-9.

2) Pietrobon AJ. Teixeira FME, Sato MN. Im-munosenescence and Inflammaging: RiskFactors of Severe COVID-19 in Older People.Front Immunol. 2020: 11:579220.

3) Cavaillon JM. Adib-Conquy M. The Pro-In-flammatory Cytokine Cascade. In: MarshallJC, editors. Immune Response in the CriticallyIII. Springer-Verlag. Berlin: Springer: 2002pp.37-66.

4)炎症に関与するサイトカインとその病態とのつながり(解説/特集)Author:川上 正舒(地域医療振興協会)Source: アンチ・エイジング医学 (1880-1579)18巻2号 Page090-094(2022.04)

プロフィール

松澤 宗範
松澤 宗範青山メディカルクリニック 院長
近畿大学医学部卒業。慶應義塾大学病院形成外科入局し、佐野厚生総合病院形成外科へ。その後、横浜市立市民病院形成外科として務める。埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科を経て、銀座美容外科クリニック新宿院院長として従事する。その後、青山メディカルクリニック開設し、今に至る。