コラム

ビタミンCの癌治療効果を調べた臨床試験について

Portrait of woman sitting in armchair and closed eyes while receiving IV infusion with vitamins

ビタミンCの癌治療への応用は、40年以上前にCameronとPaulingが発表した研究により、進行癌患者に高用量ビタミンCを静注したところ生存期間が延長したことから始まりました。

ヒトでは、1日400mg以上のビタミンCを経口投与すると血漿が完全に飽和し、60-100μmol/Lの血中濃度以上には上がりません。

一方、ビタミンCの静脈内投与では、血中濃度が20mmol/Lまで上昇し、経口投与の200倍以上となります。

in vitroでは、0.3-30 mmol/LのビタミンCは、様々ながん細胞を効果的に殺すことができ、正常細胞には大きな影響を与えないことが観察されています。

in vivoでは、マウスにビタミンCを点滴で投与すると腫瘍の成長が抑制されましたが、同じ量を経口投与すると有意な腫瘍抑制効果は認められませんでした。したがって、腫瘍抑制効果を発揮させるためには、ビタミンCの静脈内投与が望ましいと考えられます。

ビタミンCの静脈内投与は、単独または化学療法との併用で、進行性固形癌患者において安全であることが示されています。

進行癌患者を対象とした試験では、単剤療法として1.5g/kgまでのビタミンCの高用量静脈内投与は安全であり、重篤な有害事象は認められませんでした。ビタミンCはいくつかの化学療法や免疫療法の薬剤と異なる作用機序で相乗効果を示し、卵巣癌を対象に行われた試験の結果では、ビタミンCを標準化学療法に併用すると、病勢進行と全生存期間(OS)が改善する傾向が示されました。また別の臨床試験では、急性骨髄性白血病患者において、ビタミンCとdecitabineの併用はdecitabine単独よりもOSが延長することが示されました。

今回の研究では、年齢18歳以上75歳未満で、ステージIVの転移性大腸癌(metastatic colorectal cancer:mCRC)患者442名、初発の未分化病変、転移性疾患に対する治療歴がない患者が対象でした。

今回、mCRC患者の第一選択治療として、高用量ビタミンC点滴静注+FOLFOXベバシズマブとFOLFOXベバシズマブの有効性と安全性を比較する無作為多施設共同第3相臨床試験が実施されました。

実験群は、高用量ビタミンC(1.5g/kg/dを第1日から第3日まで3時間かけて静脈内投与)とmFOLFOX6(ベバシズマブ併用または非併用)が投与されました。対照群には、oxaliplatin,Leucovorin,5-Fluorouracil,bevacizumabまたは非併用を2週間毎に静脈内投与されました。

治療は最大12サイクルで、12サイクル終了後、維持療法として5-フルオロウラシルまたはカペシタビンとベバシズマブの併用または非併用を継続するかどうかを患者と相談し決定されました。ビタミンCは12サイクル後に中止されました。

主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS:最初の病勢進行、またはあらゆる原因による死亡までの期間)で、副次的評価項目は、客観的奏効率(ORR:complete response or partial response)、安全性とされました。

年齢中央値は57歳(範囲:18~75歳)で、319人(72.2%)が左側原発腫瘍で、RAS変異型が203人(45.9%)、BRAFV600E変異型が14人(3.2%)でした。

結果としては、この無作為化第3相臨床試験は、mCRC患者において、高用量ビタミンC+化学療法は、化学療法のみの治療と比較して、PFSの点で特には優れておらず、主要評価項目を達成することができませんでした。

ただし、RAS変異を有する患者は、高用量ビタミンC+化学療法により化学療法のみの場合よりもPFSが有意に改善しました。55歳以上の患者では、化学療法にビタミンCを追加することで、ある程度のPFS効果が得られました。

以前の研究で、65歳以上の患者は高率にビタミンC欠乏症であることが示されており、ビタミンCの長期大量摂取は、ビタミンC欠乏高齢マウスモデルにおいて、加齢に伴う胸腺の萎縮を抑制し、免疫細胞を維持する結果でした。

また、いくつかの研究では、高齢者集団におけるビタミンCレベルと認知能力の間に関連性があることが指摘されています。ビタミンCの静脈内投与は化学療法単独と比較して毒性をさらに高めることはなく、進行癌患者のQOLを改善することが示されました。

今回の臨床試験の結果によって、全てのがん患者に高濃度ビタミンCが有効ではないとしても、RAS変異を有する患者では有効であることが分かり、高濃度ビタミンCは安全性も高いことから化学療法との併用療法は推奨されるべきものかと思います。

 

青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範

 

参考文献:
A randomized, open-label, multicenter, phase 3 study of high-dose vitamin C plus FOLFOX +/- bevacizumab versus FOLFOX +/- bevacizumab in unresectable untreated metastatic colorectal cancer

Feng Wang 1, Ming-Ming He 1, Jian Xiao 2, Yan-Qiao Zhang 3, Xiang-Lin Yuan 4, Wei-Jia Fang 5, Yan Zhang 2, Wei Wang 6, Xiao-Hua Hu 7, Zhi-Gang Ma 3, Yi-Chen Yao 8, Zhi-Xiang Zhuang 9, Fu-Xiang Zhou 10, Jie-Er Ying 11, Ying Yuan 12, Qing-Feng Zou 13, Zeng-Qing Guo 14, Xiang-Yuan Wu 15, Ying Jin 1, Zong-Jiong Mai 8, Zhi-Qiang Wang 16, Hong Qiu 17, Ying Guo 1, Si-Mei Shi 18, Shuang-Zhen Chen 19, Hui-Yan Luo 1, Dong-Sheng Zhang 8, Feng-Hua Wang 16, Yu-Hong Li 1, Rui-Hua Xu 8
PMID: 35929990
DOI: 10.1158/1078-0432.CCR-22-0655

プロフィール

松澤 宗範
松澤 宗範青山メディカルクリニック 院長
近畿大学医学部卒業。慶應義塾大学病院形成外科入局し、佐野厚生総合病院形成外科へ。その後、横浜市立市民病院形成外科として務める。埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科を経て、銀座美容外科クリニック新宿院院長として従事する。その後、青山メディカルクリニック開設し、今に至る。

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