コラム

線維化進行を抑制するNF-E2-related factor 2 (Nrf2)

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膵移植を行った1型糖尿病患者において長期的に腎線維化が改善するという報告はありますが腎線維化は可逆性に乏しい病態です。

線維化を抑制するには細胞障害を最小限に止めることが重要です。

線維化進行抑制に関してNF-E2-related factor 2 (Nrf2)が注目されています。

腎臓は酸素需要の大きい臓器であり、エネルギー消費の盛んな近位尿細管では、活性酸素 (reactive oxygen species: ROS) が大量に発生します。

このため、近位尿細管には ROS による酸化ストレスから細胞を守るための制御機構が存在し、その一つとしてNrf2という転写因子があります。

Nrf2はKeap1によって恒常的に分解されていますが、酸化ストレス条件下でKeap1 がROSによって変性することでNrf2が分解されなくなり、核内に移行し転写調節によって抗酸化物質であるNADPHやグルタチオンの産生を促し抗酸化作用を誘導します。さらにNrf2はマクロファージの炎症応答を抑制し、抗炎症作用あります。

Nrf2活性化薬であるバルドキソロンメチルはアリストロキア酸腎症において, TGF-βのSmad 活性化経路を抑制することで ECM産生を抑制し、抗線維化作用を示すことが報告されています。また、バルドキソロンメチルにはGFR増加作用も報告され

ています。

2型糖尿病性腎症の患者227名をバルドキソロンメチル25mg、75m、100mg投与群とプラセボ群に分けて1年間のフォローを行ったところ、eGFRはプラセボ群と比較してバルドキソロンメチル投与群で有意に上昇が認められました。GFR増加の機序は

まだ解明されていませんが、上記の抗酸化作用や抗炎症作用が関与しているのではないかと推測されています。このように、Nrf2は抗酸化作用や抗炎症作用を通じて、線維化だけでなくCKDの治療にも期待される因子です。

青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範

参考文献:

1) Humphreys BD, Lin SL., Kobayashi A, et Fate tracing reveals the pericyte and not epithelial origin of myofibroblasts in kidney fibrosis. Am J Pathol 2010: 176 85-97.
2) Campanholle G. Ligresti G. Gharib SA, et al. Cellular mechanisms of tissue fibrosis. 3. Novel mechanisms of kidney fibrosis. Am J Physiol Cell Physiol 2013:304 C591-603.
3)老化腎と線維化(総説) 大久保 明紘(京都大学 大学院医学研究科腎臓内科学講座), 高橋 昌宏, 山本 恵則, 佐藤 有紀, 柳田 素子 アンチ・エイジング医学(1880-1579)17巻3号 Page268-272(2021.06)

プロフィール

松澤 宗範
松澤 宗範青山メディカルクリニック 院長
近畿大学医学部卒業。慶應義塾大学病院形成外科入局し、佐野厚生総合病院形成外科へ。その後、横浜市立市民病院形成外科として務める。埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科を経て、銀座美容外科クリニック新宿院院長として従事する。その後、青山メディカルクリニック開設し、今に至る。