コラム

食事制限による心臓のアンチエジング

Smiling Little Boy at Medical Checkup

食事制限療法には、1日の摂取カロリーを厳格に制限するカロリー制限 (caloric restriction: CR) と一定時間絶食の時間を設けるが、カロリー摂取量には制限を設けない間歇的餓 (intermittent fasting: IF) の2つがあります。

CRはさまざまな心保護効果があります。しかし、長期的なIFは加齢に伴う心機能変化に対し悪影響を与えるとの報告があります。
絶食時間によってストレスの度合いは異なりますが、老化心を含む病的心では、IFに対し注意が必要です。

心臓に対するCRの効果発現において、インスリン/IGF1(insulin-like growth factor 1)、AMPK (AMP.activated protein kinase)、サーチュイン、mTOR(mammalian target of rapamycin)の4系統の細胞内シグナルが重要な役割を担っています。

心臓老化制御目的で注目されている薬剤でSGLT2(sodium-glucose cotransporter 2)阻害薬とβヒドロキシ酪酸があります。

SGLT2阻害薬は、糖尿病治療薬にとどまらず、心不全治療薬、慢性腎臓病治療薬として使用されています。糖質を腎臓から排泄させ、カロリー量を減らすSGLT2阻害薬の主作用は、CRと類似した作用をもたらします。

糖排出に伴う腎臓での局所反応はCRではみられない現象ですが、SGLT2阻害薬投与により全身に引き起こされる反応は、CRにより引き起こされる反応と共通点が多いです。

さらにSGLT2阻害薬によりケトーシスが引き起こされます。
負荷の高い運動や24時間の絶食により血中総ケトン体濃度は1mmol/L以上に達するといわれ、SGLT2阻害薬投与によっても、血中総ケトン体濃度は最大1mmol/L程度までは上昇すると報告されています。
さらに、ケトジェニックダイエットやβヒドロキシ酪酸投与により、血中総ケトン体濃度は、最大で3〜4mmol/Lにまで達します。

ケトジェニックダイエットによる抗老化作用や、人におけるβヒドロキシ酸酸投与による強心作用に関して多くの報告があります。

しかし、どのような方法で、どの程度のケトーシスを誘導するのが適切か、慢性的または間歇的、どちらのケトーシスが好ましいか、ケトン体による老化制御はまだ分かっていないことも多いです。

 

青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範

参考文献:

1) Shinmura K. Cardiac Senescence. Heart Failure, and Frailty: A Triangle in Elderly People. Keio Med. 20166525-32
2) Eng J. McClelland RL, Gomes AS, et al Adverse Left Ventricular Remodeling and Age Assessed with Cardiac MR Imaging: The Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis Radiology. 2016: 278: 71422e
3)心臓老化とアンチエイジング医学Cardiac aging and anti-aging medicine
新村 健Ken Shinmura兵庫医科大学総合診療内科
アンチエイジング医学―日本抗加齢医学会Vol.18No.3

プロフィール

松澤 宗範
松澤 宗範青山メディカルクリニック 院長
近畿大学医学部卒業。慶應義塾大学病院形成外科入局し、佐野厚生総合病院形成外科へ。その後、横浜市立市民病院形成外科として務める。埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科を経て、銀座美容外科クリニック新宿院院長として従事する。その後、青山メディカルクリニック開設し、今に至る。