コラム

加齢に伴うホルモンの影響

Old couple in love at the beach

加齢に伴って変動するものの一つに、ホルモンが挙げられます。

身体が機能低下し、健康障害に対する脆弱性が増加している状態をフレイルと言いますが、フレイルの状態では加齢に伴って身体機能、生理機能の低下とともに生殖内分泌器官の機能低下が認められ、ホルモン動態にも大きな変化が生じてきます。

生命維持に不可欠なグルココルチコイドや甲状腺ホルモンなどのホルモンは、加齢による影響を受けにくく、一定のレベルを維持する場合が多いのに対して、性ホルモンは加齢によって特異的な変動を示します。

女性では閉経を機に血中エストロゲン濃度は低下し、血中エストロゲンの低下に伴って、下垂体からの分泌上昇により黄体形成ホルモン (LH)、卵胞刺激ホルモン (FSH) は高値となります。

男性では、加齢とともに精巣のライデッヒ細胞より分泌されるテストステロンは低下します。また、性ホルモン前駆体の一種であるデヒドロエピアンドロステロン (dehydroepiandros-terone DHEA) に関しては、同硫酸包合体であるデヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEA-sulfate: DHEA-S) とともに大半が副腎で産生されており、副腎アンドロゲンと呼ばれています。 20歳代以後において、加齢とともにDHEA、DHEA-S は直線的に減少します。

女性は男性に比べて平均寿命が長い一方、QOL や ADLの低下を伴いやすいとされています。そして、女性では男性に比べて骨折・転倒や認知症の割合が高いです。

男性においては、加齢による性ホルモン低下はうつ症状や性欲低下などの男性更年期障害とも関連すると考えられています。男性における生殖内分泌器官の機能低下は性ホルモン低下とそれに伴うアンドロゲン受容体 (AR) をはじめとする性ホルモン受容体シグナルの減弱につながると考えられます。

このように、高齢男性では加齢に伴いテストステロンレベルの低下を認めることが知られていますが、低テストステロン状態による高齢者の身体機能、転倒などへの影響が明らかなっています。

高齢男性を対象とした観察研究では、活性型テストステロン値と転倒リスクとの間に負の相関を認め、テストステロン値が下位1/4の男性において上位1/4の男性より転倒リスクが約40%高くなる結果となりました。

また、低テストステロンの影響は 65〜69歳の男性でもっとも顕著に認められ、身体能力低下とも相関を認めるなど、高齢者における性ホルモン濃度と転倒リスクとの関連性が示されました。

65歳以上の男性に3年間パッチによるテストステロン補充を行った研究では、筋肉量増加、脂肪量減少といった体組成の改善効果が認められた一方で、前立腺がんに対してGnRH アゴニスト投与などの抗アンドロゲン療法を行った患者では、筋肉量減少、脂肪量増加という体組成変化が認められました。

75歳以上の女性を対象とした検討では, 血中遊離テストステロン濃度と骨格筋量指数との間に正の相関が認められ、高齢女性についても男性同様に血中テストステロン濃度が骨格筋量と関連する可能性が示されました。

また、血清総テストステロン濃度、遊離テストステロン濃度について日常生活機能、HDS-R (Hasegawa’s dementia scale-revised)、vitality indexとの間に正の相関が認められました。

さらに高齢男性において血清テストステロン濃度と生命予後との間に関連性が認められました。

副腎ステロイドの一種であるDHEA についても加齢に伴って低下し、末梢組織でアンドロゲンや女性ホルモンに変換されて作用することが知られています。これまでの知見などから、高齢者においてDHEA-S値と転倒リスクとの間に負の相関を認める可能性が指摘されています。

認知機能との関連では、高齢女性では血中エストロゲン濃度と認知機能との関連性が認められなかった一方で、血中男性ホルモン濃度、血中DHEA 濃度と記銘力との間に正相関が認められたという報告もあります。 また、血中DHEA 濃度とADL との間に関連性が認められ、6カ月間のDHEA投与により、非投与群と比較して有意な認知機能維持・ 改善効果が認められています。

高齢女性に対して30分間/日の筋力トレーニングに準じた運動介入を3ヵ月間実施した結果では、血中テストステロン濃度ならびに血中DHEA-S濃度の上昇が認められたとともに、その後の運動中止によって運動開始前の血中濃度まで低下しました。

高齢者の筋量・筋力と血中ビタミンD濃度との関連性については、ビタミンDの骨代謝作用に加えて、筋肉に対するビタミンDの直接的作用の可能性も示されています。

 

青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範

参考文献
高齢者疾患・老年症候群の特性とホルモン
小川 純人(東京大学 大学院医学系研究科加齢医学)
麻酔(0021-4892)68巻増刊 Page S183-S187(2019.11)
・Xue QL, Bandeen-Roche K. Varadhan R. Zhou J.Fried LP. Initial manifestations of frailty criteria and the development of frailty phenotype in the Women’s Health and Aging Study II. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2008; 63: 984-90.
・Yakabe M. Hosoi T. Akishita M. Ogawa S. Updated concept of sarcopenia based on muscle-bone relationship. J Bone Mirfer Metab (in press).

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