様々な疾患とサイトカインの関係
加齢とともに腸内細菌叢の構成は変化し、悪玉菌が増え、善玉菌が減少し、腸内菌共生バランス失調と呼ばれる状態になりやすく、善玉菌と悪玉菌の組成比と、血中IL-6やIL-8値は相関するという報告があります。
炎症性サイトカインはアルツハイマー病、パーキンソン病、動脈硬化、2型糖尿病、骨粗鬆症、腎障害など、加齢で増加する多くの疾患の病態に関与しています。
平均年齢78歳の高齢者集団 (675人)において、IL-6値により4グループに分けると、一番高いグループの死亡率は一番低いグループの2倍であるという報告もあります。
認知能との相関を調べた研究では、TNF、IL-1、IL-6、IL-10、IL-12が高いほど認知能が低く、特にIL-6とIL-12と処理速度、機能との関連が明確であったと報告されています。
炎症性サイトカインは、脳の機能維持に有用とされていますが、中枢神経系における炎症性サイトカインの増加が長期間続くと、脳由来神経栄養因子 (BDNF) の減少、グルタミン酸作動性ニューロンの活動亢進、酸化ストレスの増強を起こし、これらは認知機能の抑制に関与すると推定されています。
動脈硬化を引き起こす原因は血管の炎症で血中コレステロールなどが多くの危険因子が知られていますが、それらが免疫細胞を介して血管に炎症反応を起こし、多くのサイトカインが関わっていることが分かっています。
また、炎症性サイトカインの多くが、高齢者にみられる代謝異常に深くかかわっていると考えられています。そして糖尿病患者の免疫系は、若い時から高齢者にみられる特徴を示すようになり、早くから老化がはじまると考えられています。
脂肪組織の脂肪細胞は、アディポネクチンという糖代謝を促進するサイトカインを分泌しますが、脂肪を蓄積し肥満になるとTNF をはじめとする炎症性サイトカインを分泌します。また、脂肪組織の間質細胞はIL-4、IL-5、IL-10、IL-13、IL-33などの抗炎症性サイトカインを分泌しますが、肥満により脂肪細胞からのTNFが優位となり、血中からマクロファージやリンパ球を誘引し、さらに炎症性サイトカインの産生を増やします。
高齢者の筋肉量の減少はサルコペニアと呼ばれ、サルコペニアでは筋線維数も減少することが問題とされています。米国の疫学調査では、筋肉量、筋力と血中TNF、IL-6の値が逆相関することが示され、ここでもその成因にこれらのサイトカインが関与することが推測されています。
青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範
参考文献
1) Fulop T. Larbi A, Dupuis G, et al Immunosenescence and InflammAging As Two Sides of the Same Coin: Friends or Foes Front Immunol 2018:8:1960.
2) Fulop T, Witkowski JM, Olivieri F. et al. The integration of inflammaging in age-related diseases. Semin Immunol 2018: 40:17-35
3) Cohen HJ. Pieper CF. Harris T. et al. The as sociation of plasma IL-6 levels with functional disability in community-dwelling elderly. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 1997: 52:M201-8.
4)炎症に関与するサイトカインとその病態とのつながり(解説/特集)Author:川上 正舒(地域医療振興協会)Source: アンチ・エイジング医学 (1880-1579)18巻2号 Page090-094(2022.04)