間葉系幹細胞(Mensenchymal stem cell 以下 MSC)は、間葉組織すなわち中胚葉由来の結合組織に存在する、多分化能をもつ幹細胞です。
1970年代から1980年代にかけて、骨髄中に骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞の三系統へと分化できる細胞の存在が同定されました。
2000年頃からは骨髄・脂肪・血液・臍帯・臍帯血・骨膜・軟骨膜・軟骨などのさまざまな組織からも間葉系幹細胞が発見され、MSCという概念が確立しました。
MSCの基準について国際細胞治療学会が提案する3項目を簡潔に書きますと
1、 接着能を有すること
2、 ある特定の表面抗原を持つこと
3、 骨芽細胞・軟骨細胞・脂肪細胞への分化能をもつこと
上記3項目をみたす細胞とされています。
MSCは、中胚葉系組織への多分化能だけでなく、内胚葉系および外胚葉系の細胞へも分化することが明らかとなっています。
これまでに内胚葉系の細胞としては肝細胞が、外胚葉系の細胞としては神経細胞がMSCから作製されています。
一方で、MSCは未分化状態では炎症抑制効果、細胞増殖促進効果、血管新生促進効果などをもつサイトカイン・増殖因子を分泌し、パラクラインを介して組織修復を支持することも明らかにされています。
さらに、MSCは障害部位を探し当てて、自発的にその部位へと集まります。
そのため、局所投与が困難な臓器に対しても、静脈投与で、標的臓器へとMSCを効率的に届けることが可能となります。
ただ現時点ではMSCが損傷した組織の細胞へと分化することで再生するのか、あるいは未分化状態のままパラクラインによって組織修復に寄与するのか、という議論についてはまだ決定的な結論が出されておらず、今後のさらなる研究が必要です。
そして上記の能力に加え、MSCの分泌するエクソソームにもMSCと同様の治療効果があることが分かってきています。
MSCのパラクライン効果が組織修復において重要で、パラクライン効果の一部がエクソソームに由来することが明らかになってきています。
また、これまでパラクライン効果で注目されていたのは常にタンパク質でしたが、エクソソーム研究によってmiRNAやmRNAなどの核酸も一役を担っていることが明らかになってきました。
青山メディカルクリニック
院長 松澤 宗範
参考文献:
【エクソソームとDDS】新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来エクソソームの応用可能性(解説/特集)
Author:勝田 毅(国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野), 落谷 孝広
Source: Drug Delivery System (0913-5006)29巻2号 Page140-151(2014.03)