間葉系幹細胞(Mensenchymal stem cell 以下 MSC)が分泌するエクソソームによる治療効果の最初の報告は、腎疾患に対してのものです。
すでに急性腎疾患モデル動物に対して、移植したMSCが上皮細胞に対してパラクライン的に働いて組織再生を支持することが知られていましたが、MSCのパラクライン効果において、エクソソームが重要な役割を担っていることが、2009年にBrunoら研究者によって明らかにされました。
さらにそのパラクライン効果はエクソソームに内包するマイクロRNAの伝達によってもたらされていることが判明しました。
MSC-エクソソームが内包するマイクロRNAの中には転写制御や増殖、免疫調節などに関わるものが多く含まれており、組織の再生誘導に関与していることが示唆されました。
その後、別の実験からも、MSC-エクソソームが急性、慢性両方の腎障害に対して細胞の障害を保護する効果が報告されています。
線維芽細胞由来のエクソソームにはそのような効果は見られなかったことから、細胞保護作用はMSC-エクソソームに見られる特徴的な性質であるといえます。
青山メディカルクリニック
院長 松澤 宗範
参考文献
【エクソソームとDDS】新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来エクソソームの応用可能性(解説/特集)
Author:勝田 毅(国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野), 落谷 孝広Source: Drug Delivery System (0913-5006)29巻2号 Page140-151(2014.03)