コラム

前立腺癌細胞由来のエクソソームが骨転移に関与

Man scientist in protective gloves holding test tube with reagent

最近の研究によりエクソソームを介して内包物が細胞間で受け渡され、エクソソームが細胞間情報伝達に寄与することが分かってきており、がん研究においては、がん細胞由来のエクソソームが、がん微小環境や遠隔転移などに大きくかかわっていることが明らかになっています。

骨は前立腺癌の主な遠隔転移臓器ですが、骨転移の病態は完全には明らかになっていません。

前立腺癌細胞株(PC3M)由来のエクソソームは、エクソソームのみを破骨細胞前駆細胞 (RAW264.7)に添加した場合はその分化は誘導されませんでしたが、少量のReceptor activator of nuclear factor kappa-B ligand(RANKL)存在下にエクソソームを添加すると破骨細胞の分化が有意に誘導されました。

さらに正常前立腺上皮細胞株(PNT2)由来のエクソソームでは起こりませんでした。

これにより前立腺癌細胞由来のエクソソームが特異的に破骨細胞の分化をRANKL存在下に誘導していることがわかりました。

また、前立腺癌細胞株由来のエクソソームに含まれる破骨細胞の分化を誘導する分子を同定するために、PC3M細胞において発現が高かったタンパク質21種が同定されました。
さらにこれらのタンパク質のエクソソーム上での発現を抑制し、CUB domain-containing protein 1(CDCPI)の発現を抑制したPC3M細胞由来のエクソソームは RANKL存在下においても破骨細胞の分化を誘導しないことが分かりました。

一方で、もともとCDCP1の発現がないヒト胎児腎細胞 293(HEK293細胞)を用いて、CDCP1を強制発現させた細胞では、RANKL存在下における分化を評価したところ、破骨細胞の分化を誘導しました。

以上から、骨転移を有する前立腺癌患者由来のエクソソームはCDCPlの発現が上昇しており、エクソソームに存在するCDCP1が破骨細胞の分化に寄与することが同定されました。

青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範

 

参考文献:

1)Kosaka N Yoshioka Y,Fujita Y,et al:Versatile roles of extracellular vesicles in cancer. J CIin Invest 126:1163-1172,2016
2)Urabe F,Patil K,Ramm G,et al:Extracellular vesicles in the development of organ-specific metasta- sis. J Extracell Vesicles 10:e12125,2021
3)Urabe E Kosaka N, Kimura T, et al:Extracellular vesicles:Toward a clinical application in urologi- cal cancer treatment. Int J Urol 25:533-543,2018
4)前立腺癌細胞由来エクソソームを標的とした革新的骨転移治療薬の開発(解説)占部 文彦(東京慈恵会医科大学 泌尿器科), 小坂 展慶, 落谷 孝広, 頴川 晋泌尿器外科(0914-6180)35巻8号 Page873-876(2022.08)

プロフィール

松澤 宗範
松澤 宗範青山メディカルクリニック 院長
近畿大学医学部卒業。慶應義塾大学病院形成外科入局し、佐野厚生総合病院形成外科へ。その後、横浜市立市民病院形成外科として務める。埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科を経て、銀座美容外科クリニック新宿院院長として従事する。その後、青山メディカルクリニック開設し、今に至る。