テロメアの短縮は細胞の老化の兆候ですが、このことが癌からの保護に役立っている可能性があることが判明しました。
人間の身体は、毎日1,000億個もの細胞が死に、新しい細胞に置き換えられていきます。
しかし新しい細胞に置き換わる過程でDNA変異が発生し、異常な細胞が発生します。
テロメアは、染色体内のDNAを損傷から守り、「染色体間融合」も防いでいます。通常、この染色体末端部は、年をとるにつれて短くなっていきます。
テロメアのDNAは、細胞が分裂すると短くなり、最終的に細胞分裂を停止します。
しかし、癌細胞では、テロメラーゼと呼ばれる酵素が活性化され、テロメアを伸長させ短縮を防ぐため、細胞は無期限に分裂する可能性があります。
オランダのRadboud University Medical Centerの医師らは癌になりやすい家族歴を持つ家族を調べた結果、調べた家族はTINF2遺伝子の突然変異を有していました。
TINF2の遺伝子は、テロメアの長さを担うTIN2タンパク質を制御しており、長いテロメアを持って生まれた場合、癌になるリスクがより高くなることを示しています。
テロメア短縮についての研究はがん予防およびがん治療戦略の開発に役立つ可能性があります。
青山メディカルクリニック
院長 松澤 宗範
参考文献:
・テロメアの短縮による癌の抑制 間質性肺疾患の新たな治療法
Author:高久 史麿(地域医療振興協会)
Source: 地域医学 (0914-4277)35巻4号 Page380-382(2021.04)