高血圧、脂質異常症、高血糖、喫煙など、動脈硬化を促進する危険因子が明らかになり、その危険因子を改善する治療法が開発されているにもかかわらず、心血管疾患(cardiovascular:CVD)は世界の主要な死因となっています。
そのような中、炎症が残存リスク因子となっているだけでなく、CVDの二次予防のための有効な治療ターゲットであることが証明されてきています。
CAD患者において、現行の二次予防治療へのコルヒチン0.5 mg/日の追加により、心血管イベントリスクが低下することも証明されました。
高齢者では、CHIP(clonal hematopoiesis of indeterminatepotential)と呼ばれる特定の遺伝子変異を有する造血幹・前駆細胞が一定割合で出現し、造血器腫瘍のリスクだけでなく、動脈硬化性心血管病の発症にも関連することが報告されました。
また、運動不足や睡眠障害などの環境ストレスが動脈硬化の進行を加速させるメカニズムにも炎症性単球や好中球の産生増加が関与していることが証明されています。
細胞老化は、加齢に伴う臓器の機能低下や低レベルの炎症の持続の原因となっています。
細胞老化には、DNA損傷、テロメア長の短縮、代謝障害、オルガネラのストレスなど、いくつかの誘因があります。
老化した細胞は、SASP (senescence-associated secretoryphenotype)と呼ばれる炎症を引き起こす因子を分泌します。
老化に伴って生体内に蓄積された老化細胞は、SASPを介して周辺組織に慢性炎症を引き起こし、心血管疾患、内分泌・代謝疾患、がん、アルツハイマー病、自己免疫疾患などの加齢性慢性疾患の発症に寄与します。
そして、免疫系の細胞の老化は、加齢性疾患の発症に重要な役割を果たしています。免疫細胞が老化すると、獲得免疫反応の低下、ワクチン効率の低下や、過剰な炎症反応が誘導されやすくなる傾向などがあげられます。
そして、この現象は、「免疫老化」と呼ばれています。
青山メディカルクリニック
院長 松澤 宗範
参考文献:
・肥満と免疫機能異常 肥満と老化に共通する免疫異常と心血管疾患
Author:佐野 元昭(慶応義塾大学 医学部循環器内科), 白川 公亮
Source: 肥満研究 (1343-229X)27巻3号 Page119-124(2021.12)