がん細胞は自らの細胞の増殖プログラムを呼び起こし、勝手に自己増殖します。がん細胞は増殖因子をまき散らして際限なく増え続けます。
さらに原発巣を離れ、別の臓器や器官でもがん細胞は増えていき転移します。がん細胞はエクソソームを使用して別の場所に増殖しやすい環境を転移する前から作ることができます。
正常細胞の場合は別の場所に移動したとしても、接着する足場がないととどまることができません。これを足場依存性といって、ほかの場所では増殖できない仕組みになっています。また、ほかの臓器の細胞同士が接触すると危険防止のために、接触阻止という作用が起こることで、二重にガードされています。
ところが、がん細胞はエクソソームを使用して転移先の環境を変え、ほかの臓器の細胞と接触しても増殖を続けられる性質を獲得することができます。
こうして、増殖と転移を可能にしたがん細胞は体を蝕んでいき、やがて命まで奪ってしまいます。これを食い止めるには、がんの早期発見・早期治療が重要です。
がんを予防するのであれば、一般にいわれているような食生活や生活習慣を改善してリスクファクターを減らすなど、日常生活のなかで実践していくことは可能でしょう。しかし、すでに発病してしまった場合は、食生活や生活習慣の改善ではがんを克服することは困難といわざるを得ません。がんに対抗するには、免疫細胞の活気を取り戻して防御と同時に攻撃力を強化することが重要となります。
青山メディカルクリニック院長 松澤 宗範
参考文献:
・免疫老化のメカニズムを解明しました 京都大学
・免疫システムの老化を引き起こす仕組みを発見科学技術振興機構 愛媛大学
・内藤篤彦 : 免疫系の老化と慢性炎症日本血栓止血学会誌 26, 297-301, 2015
・Bianconi E, et al.(2013) An estimation of the number of cells in the human body. Ann Hum Bio. 40 (6):463-471
・北海道大学プレスリリース (2017/8/16)
・伊東信久:がんと闘うN K T細胞標的治療