がんは遺伝子の異常が積み重なることで発症するので、長生きをすればするほど遺伝子に異常が生じるリスクは高くなり、がんになる確率も上がります。ある意味、がんは老化現象の一つともいえます。
健康な人の体内でも毎日3000~5000個のがん細胞が発生しているといわれています。それでもがんにならないのは、免疫システムが備わっているからです。免疫とは病原体などの異物を排除して体を守る生体防御システムのことで、これが正常に働いている限り、病気にはなりません。しかし、免疫システムも万全ではなく体力が落ちるのと同様に、加齢に伴って免疫も衰え、がんを排除できなくなります。
ただ、免疫力の低下には加齢のほかに、生活習慣や食生活などの環境、ストレスなども大きく関係しているため、若い人でも過度のストレス、睡眠不足の状態が続いていたりすると、発症する可能性があります。
細胞分裂では、遺伝子をコピーしていますが、コピーミスを起こすことがあります。これが遺伝子の突然変異です。コピーミスを起こす原因として挙げられているのが老化ですが、ほかにも化学物質、ウイルス、放射線、紫外線などの発がん因子があります。
発がん因子によって遺伝子が傷つき変異を起こすと、細胞分裂のコントロールが利かなくなり、増殖し続けるようになります。この増殖し続ける細胞が、がん細胞です。
しかし、細胞に変異が起こり、がん化したとしても、それですぐにがんを発症するわけではありません。免疫システムが備わっているからです。この免疫の働きやアポトーシスによって異常な細胞は排除されるため、基本的にはがん化した細胞は生き残ることはできません。ところが、途中で死滅せずにがん細胞が増えていくと、がんが発症してしまいます。
一般的には、たった1つのがん細胞が検査で見つかるほど大きくなるには、10~20年の時間を要します。
青山メディカルクリニック院長 松澤 宗範
参考文献:
・免疫老化のメカニズムを解明しました 京都大学
・免疫システムの老化を引き起こす仕組みを発見科学技術振興機構 愛媛大学
・内藤篤彦 : 免疫系の老化と慢性炎症日本血栓止血学会誌 26, 297-301, 2015
・Bianconi E, et al.(2013) An estimation of the number of cells in the human body. Ann Hum Bio. 40 (6):463-471
・北海道大学プレスリリース (2017/8/16)
・伊東信久:がんと闘うN K T細胞標的治療
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