がんは医療技術が進歩した現代においても、いまだに多くの人の命を奪う天敵です。
がん細胞は、誰の体内でも毎日約5000個発生しているといわれています。それでもがんにならないのは、体に備わっている免疫機能があるからです。しかし、免疫機能も加齢とともに低下していきます。
がんの治療法というと、3大療法といわれる手術・放射線・抗がん剤が主流ですが完全とはいえないのが現状です。そこで第4の治療法として注目されたのが「免疫療法」でした。3大療法では食い止めることができなかった進行がんの患者が、最後の望みをかけて試す治療法という位置づけになっていたように思われます。
そして近年免疫療法が新たな局面を迎えています。免疫チェックポイント阻害剤をはじめとする免疫療法が次々と登場し、有力な選択肢として期待が高まりつつあります。
NKT細胞標的治療も注目されはじめてきています。NKT細胞は免疫細胞の一つですが、体内にはわずか0.5%しか存在しないために重要な働きはしていないと考えられ、あまり研究されてきませんでした。ところが、理化学研究所によって謎が解明されると、免疫のなかのリーダー的な存在であることがわかりました。つまり、NKT細胞の働きを活性化すれば、免疫機能全体の働きを高めてがんに対する攻撃力が強化されるということです。個人差はありますが期待どおりの効果を得られる方も実際にいらっしゃいます。そして標準治療の3大療法と併用すると、抗がん剤の副作用も軽減されます。また、ステージIやⅡといった早期がんの段階で用いると手術を回避できるケースもあります。
青山メディカルクリニック 松澤 宗範
参考文献:
・免疫老化のメカニズムを解明しました 京都大学
・免疫システムの老化を引き起こす仕組みを発見科学技術振興機構 愛媛大学
・内藤篤彦 : 免疫系の老化と慢性炎症日本血栓止血学会誌 26, 297-301, 2015
・Bianconi E, et al.(2013) An estimation of the number of cells in the human body. Ann Hum Bio. 40 (6):463-471
・北海道大学プレスリリース (2017/8/16)
・伊東信久:がんと闘うN K T細胞標的治療
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