エクソソームを疾患治療へと応用する試みが行われており、癌細胞などから放出される疾患を増悪させるエクソソームを標的とした治療や間葉系幹細胞(MSC) などから放出される疾患を改善させるエクソソームを用いた治療、さらには薬剤や核酸(siRNA、miRNA、アンチセンス核酸)などの輸送媒体としてのドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用が考えられています。癌由来エクソソームを標的とした治療法として、ヒト乳癌細胞移植マウスモデルにおいてエクソソームに対する抗体を投与し、癌由来エクソソームを除去することにより転移を抑えることが報告されており、今後の臨床応用、膵描治療への展開が望まれます。MSC由来エクソソームは、さまざまな臓器における炎症の抑制、組織の修復や創傷治癒に効果のあることが示されています。MSC由来エクソソームに内包される miR-143は、膵癌細胞の増殖能を抑制し、アポトーシス誘導に働ことが示されています。このことは、腫瘍細胞と間質細胞には、エクソソームを介した関係があることを示唆します。
膝痛治療におけるDDSへの応用として、アポトーシス制御に重要な因子である Inhibitor of Apoptosis(IAP)ファミリータンパク質の一つであるサバイビンに関する報告があります。エクソソームを介して変異型サバイビンを膵癌細胞に投与したところ、塩酸ゲムシタビン感受性が増強しました。エクソソームを抗原デリバリーに活用するワクチン療法などの研究開発も進められており、早期の臨床展開が期待されます。
青山メディカルクリニック院長 松澤宗範
参考文献:胆と膵 (0388-9408)42巻8号 Page717-724(2021.08)
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