エクソソームは、最近テレビでも取り上げられて、徐々に世間に認知されてきています。
エクソソームは細胞から分泌される大きさ 30〜200 nm程度の脂質二重膜構造をもつ小胞で、1980年代に発見されて以来10年あまりの間は細胞内の不要物を廃棄するためのゴミ袋のようなものと考えられてきました。
しかし、エクソソームが細胞間相互作用の媒体として重要な役割をもつことが分かり、がんの発生・進行、免疫制御、組織再生など幅広い生命現象に関わっていることが判明しました。
さらに2000年代後半には、タンパク質だけでなく microRNA(miRNA)、mRNAなどの遺伝物質が、エクソソームの授受を介して細胞間を移動することが示されました。そしてエクソソームを受け取った細胞は形質を変化させ、生命現象の制御に寄与します。
エクソソームの機能は多岐にわたりますが、おおむねその由来細胞の性質を反映することから、細胞が自身の役割を遂行するうえで用いる道具と見なすことができます。
そして、青山メディカルクリニックでも取り扱っている間葉系幹細胞(Mensenchymal stem cell: MSC)のエクソソームはさまざまな疾患に対して治療効果を示すことがわかってきました。
MSCは成体に存在する幹細胞で、組織の障害時に修復を助けることが知られており、再生医療・細胞治療における優れたソースとして注目を集めています。
さらに、複数種類の疾患に対し MSC由来のエクソソーム(MSC-エクソソーム)が MSC自身と同様の治療効果を示すことが明らかになっています。
エクソソームはまだ解明されていないことが多いですが、がん治療やがん検査、美容・アンチエイジングの分野で活躍する可能性を秘めています。
青山メディカルクリニック
院長 松澤 宗範
参考文献
・新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来エクソソームの応用可能性(解説/特集)
Author:勝田 毅(国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野), 落谷 孝広Source: Drug Delivery System (0913-5006)29巻2号 Page140-151(2014.03)