心疾患に対して間葉系幹細胞(Mensenchymal stem cell: MSC)由来エクソソームを使用した治療応用の研究が盛んに行われています。
Limの研究グループは、MSC由来のエクソソームが心筋障害に対して治療効果を示すことを報告しました。
Limの研究では心筋梗塞を負わせたモデル動物に対し、MSCの培養上清から回収したエクソソーム画分と、それ以外の上清画分の投与を行いました。
その後、再灌流処置をして障害の程度を比較したところ、エクソソーム画分に治療効果が多く出ていることが判明しました。
そしてエクソソーム画分の投与では、タンパク質量にして総培養上清の 1 /10以下の量で同等の治療効果が認められました。
また、心筋梗塞に対してMSC-エクソソームによる治療効果は極めて短い時間で見られること、MSCの分泌するタンパク質の中に細胞内タンパク質や膜タンパク質が多く含まれていることから、MSC-エクソソームは心筋細胞へと効率的かつ迅速に機能性タンパク質を送達することができると考えられています。
また、MSC-エクソソームの投与により酸化的ストレスの軽減およびPI3K/Akt経路のリン酸化の促進が心筋細胞の保護効果につながることも報告されています。
ただし現時点では具体的に、MSCから送り届けられたどのような分子が受け手側の細胞内で機能しているのかといった詳細は明らかになっていません。
青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範
参考文献
【エクソソームとDDS】新規治療薬開発への間葉系幹細胞由来エクソソームの応用可能性
Author:勝田 毅(国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野), 落谷 孝広Source: Drug Delivery System (0913-5006)29巻2号 Page140-151(2014.03)