幹細胞(stem cell)は自己複製能および分化能を持つ細胞で、ES細胞、iPS細胞、胎児幹細胞および組織幹細胞が知られています。
〜ES 細胞(embryonic stem cell)〜
ES 細胞は多能性幹細胞であり個体を構成する全ての細胞に分化できます。ES細胞は未授精卵を用いたクローン技術で作成された胚性幹細胞です。
〜iPS細胞(induced pluripotent stem cell)〜
iPS細胞は多能性幹細胞であり、マウス皮膚由来の線維芽細胞にウイルスを用いて遺伝子導入して作成されたものです。その後、ヒト線維芽細、あるいは、表皮細胞、肝細胞、ランゲルハンス島のペータ細胞などからも作成されています。ES細胞およびiPS細胞は再生医療や人工組織の作成などで研究されている新規治療法です。
〜胎児幹細胞(fetal stem cell)〜
胎児幹細胞は複能性幹細胞で、胎児の血液、骨髄、肝細胞、膵臓および腎臓から採取されています。
〜組織幹細胞(tissue stem cell) (体性幹細胞(adult stem cell))〜
組織幹細胞は複能性幹細胞であり、造血幹細胞、間葉系幹細胞、表皮幹細胞、腸の組織幹細胞、生殖系幹細胞、毛包幹細胞あるいは歯髄幹細胞などの幹細胞が知られています。
造血幹細胞はすでに多くの臨床応用があり骨髄移植として良く知られています。骨髄移植は骨髄そのものではなく、造血幹細胞を作成して移植するものが主流です。造血幹細胞は骨髄以外に臍帯血や末血からも作成されるようになっています。
間葉系幹細胞は多数の増殖因子の分泌あるいはエクソソームなどを分泌する機能を持っているため、間葉系幹細胞の培養上清液は新薬として考えられています。
老化が進むと感染症にかかりやすく、機能障害が起きやすく、酸化ストレスなどの多くの環境因子に影響され易くなります。
そして今、老化によって引き起こされる多くの疾患に対して間葉系幹細胞の治療効果が期待されています。
また、皮膚老化に関しても間葉系幹細胞による若返り効果が期待できます。
青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範
参考文献:
1) Hayflik L. Biological aging is no longer an unsolved problem. Ann NY Acad Sci. 2007; 1100:1-13 Review.
2) Reed MJ, Edelberg JM. Impaired angiogenesis in the aged Knowledge Enviorn. 2004; 2004: pe7 Review.
3) 中山亨之, 加藤栄史 (総説) 脂肪組織由来間葉系幹細胞を利用した細胞療法―現状と展開 日本輸血細胞治療学会誌. 2013:59:450-456.
4)国際抗老化再生医療学会雑誌 第1号(1-20)2018 間葉系幹細胞による治療と抗老化 佐藤茂 劉效蘭