コラム

DDSとして期待されるエクソソーム

microscopic cells in a blue background, 3d illustration

生体高分子のドラッグデリバリーシステム(DDS)として近年期待されている素材の1つとして、エクソソームがあります。エクソソームは細胞から分泌される直径 100 nm 前後の膜小胞でタンパク質、脂質、核酸などを含む小胞です。エクソソームにはマイクロRNA(miRNA)が含まれており、エクソソームを取り込んだ細胞にmiRNAが送達されることで、遺伝子発現の制御が行われることが見いだされ、がんの転移や炎症反応など種々の生体内イベントにおいて、エクソソームを介した細胞間の情報伝達が果たす役割に注目が集まっています。

エクソソームは内因性の核酸・タンパク質のデリバリーキャリアであることから、効率的な DDS となることが期待されています。また、エクソソームそのものを治療薬として利用する試みも報告されています。例えば、がん細胞から産生されるエクソソームはがん抗原を有することから、がんワクチン療法への応用が検討されています。また、間葉系幹細胞(MSC)由来のエクソソームが抗炎症作用や創傷の治癒促進効果をもつことが報告されており、治療への応用を目指した研究が行われています。

エクソソームは直径30 ~ 100 nm前後の脂質二重膜からなる粒子で、表面は負電荷を帯びています。その主な構成成分としては、エクソソームの脂質二重膜を構成する脂質、脂質膜中あるいは膜表面に存在するタンパク質、小胞の内部に存在するタンパク質と核酸などが挙げられます。
エクソソームの体内動態は膜を形成する分子によって大きな影響を受けると考えられます。エクソソーム膜の脂質組成は、その産生細胞に依存して異なることが報告されています。
また、エクソソームの表面に存在する分子として、CD63 に代表される膜4回貫通タンパク質(tetraspanin)やMHC 分子、integrinなど数多くの分子が報告されていますが、エクソソーム表面上の分子の種類も産生細胞の種類や状態に依存して変化することが報告されています。

エクソソームの細胞取り込み機構の解析を目的として培養細胞を用いた検討は種々報告されていますが、取り込み機構は取り込み細胞によるエクソソームの表面上の分子の認識が重要であることを示す報告が多くみられます。

エクソソームの表面分子はその産生細胞の種類に依存するとともに、取り込み細胞側におけるエクソソーム側の分子を認識する分子の種類も取り込み細胞の種類に依存することから、産生細胞と取り込み細胞の組み合わせがエクソソームの細胞取り込み特性を決定する重要な因子となります。

 

青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範

 

1)Valadi H, Ekström K, Bossios A, Sjöstrand M, Lee JJ, Lötvall JO. Exosome mediated transfer of mRNAs and microRNAs is a novel mechanism of genetic exchange between cells. Nat Cell Biol. 2007; 9: 654-659.
2)Schneider A, Simons M. Exosomes: vesicular carriers for intercellular communication in neurodegenerative disorders. Cell Tissue Res. 2013; 352: 33-47.
3)【エクソソームとDDS】エクソソームの体内動態(解説) 高橋 有己(京都大学 大学院薬学研究科病態情報薬学分野), 西川 元也, 高倉 喜信 Drug Delivery System(0913-5006)29巻2号 Page116-124(2014.03)

プロフィール

松澤 宗範
松澤 宗範青山メディカルクリニック 院長
近畿大学医学部卒業。慶應義塾大学病院形成外科入局し、佐野厚生総合病院形成外科へ。その後、横浜市立市民病院形成外科として務める。埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科を経て、銀座美容外科クリニック新宿院院長として従事する。その後、青山メディカルクリニック開設し、今に至る。