白血病細胞由来のエクソソームを使用した研究では貪食系細胞ではエクソソームの取り込み効率は高いですが、非貪食系細胞はエクソソームをほとんど取り込まないことが示されており、取り込みは貪食系細胞選択的である可能性があります。
卵巣がん細胞による研究においては、エンドサイトーシスがエクソソームの主な取り込み機構であることが示されています。また、クラスリン依存性のエンドサイトーシス阻害剤、アクチン重合阻害剤、マクロピノサイ トーシス阻害剤などによって取り込みが低下したことから、これらの経路の関与を示しています。
一方で、Proteinase Kによってエクソソームあるいは取り込み細胞表面のタンパク質の除去による取り込み効率の低下が観察されており、エクソソームの表面上の分子の認識の重要性が示されています。
ヒトメラノーマ細胞由来のエクソソームを用いて、エクソソーム産生細胞と同一のメラノーマ細胞による取り込みの機構について検討された研究では、エクソソームの膜と取り込み細胞の細胞膜との脂質膜の融合によって取り込みが起こることが示されています。
また、細胞膜の脂質の構成を変化させることで膜融合の効率が低下することから、脂質組成が重要であると考えられます。また、エクソソームの産生細胞と取り込み細胞の種類だけではなく、エクソソーム産生・取り込み細胞の状態や周辺環境によって、その取り込みが変化することも報告されています。
メラノーマ細胞をエクソソーム産生細胞・取り込み細胞として用いた検討においては、エクソソーム回収時あるいは取り込み実験時の培養液のpHの影響が検討されています。酸性条件下で回収されたエクソソームはその脂質組成が変化するとともに、メラノーマ細胞に取り込まれやすいものとなり、酸性条件下で取り込み実験を行うとエクソソームの取り込み効率が増大することが報告されています。
また、 B細胞由来のエクソソームの線維芽細胞による取り込みについての検討では、B細胞由来のエクソソーム表面には integrinβ1 およびβ2 が存在していますが、取り込み細胞側である線維芽細胞をTNF―αで処理することにより、integrin認識分子であるICAMの線維芽細胞表面における発現量が上昇し、線維芽細胞によるB細胞由来のエクソソームの取り込みの亢進が観察されています。
従って、例えば、炎症部位のようにTNF―αの量が増大している部位においてはエクソソームの取り込み量が亢進するのではないかと考えられます。
青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範
参考文献:
1)EL Andaloussi S, Mäger I, Breakefield XO, Wood MJ. Extracellular vesicles: biology and emerging therapeutic opportunities. Nat Rev Drug Discov. 2013 ; 12: 347-57.
2)Lai RC, Yeo RW, Tan KH, Lim SK. Exosomes for drug delivery – a novel application for the mesenchymal stem cell. Biotechnol Adv. 2013; 31: 543-551.
3)【エクソソームとDDS】エクソソームの体内動態(解説) 高橋 有己(京都大学 大学院薬学研究科病態情報薬学分野), 西川 元也, 高倉 喜信 Drug Delivery System(0913-5006)29巻2号 Page116-124(2014.03)