エクソソーム

Biochemist working on microscope for cell illustration

エクソソームの血中半減期と移動先

エクソソームはドラッグデリバリーシステム(D D S)の開発や治療薬として試みた研究が盛んに行われております。
エクソソームをマウス腹腔内投与すると、投与されたエクソソームは腎臓や肝臓、脾臓、肺へと分布することが明らかとなっています。
また、エクソソームをマウスの鼻腔内に投与すると、エクソソームが脳内へと到達することが報告されています。
鼻腔内に投与されたエクソソームは脳に加えて、小腸や胃といった消化器官へも移行しますが、肝臓や肺にはほとんど移行しないという結果が出ています。

間葉系幹細胞由来のエクソソームは、治癒促進や抗炎症作用があります。例えば、急性腎炎を発症したマウスではエクソソームの腎臓への集積量が増加することが観察されています。

また、エクソソームが果たす役割についてがん転移があります。マウスのfoot pad の皮下にメラノーマ細胞のエクソソームを投与すると、所属リンパ節にエクソソームが移行するとともに、foot padの皮下に投与されたメラノーマ細胞のリンパ節への転移が促進されることが報告されています。他に静脈内投与されたメラノーマ細胞由来エクソソームは、骨髄や肺に集積するとともに、骨髄中の細胞を血管新生促進作用を有する細胞へと変質させることで、がんの転移を促進することが報告されています。

エクソソームの体内での動きはその産生細胞と投与経路、宿主側の状態により変化することが考えられます。

エクソソームの体内動態の解析の手段としては、脂質膜を染色可能な蛍光色素がよく使用されており、静脈内に投与されたメラノーマ細胞由来のエクソソームは、投与後10分以内に肝臓、脾臓、肺へと分布することが観察されています。
また、肝臓、脾臓に移行したシグナルは速やかに消失する一方で、肺ではすぐには消失しないことが観察されています。
この肝臓、脾臓におけるエクソソームの急速なシグナル低下は、エクソソームの取り込みと分解を示すものではないかと考えられています。
また、メラノーマ細胞由来エクソソームの血中半減期は約2分程度と非常に短く、肝臓や脾臓、肺は、マクロファージが多く存在する臓器なため、メラノーマ細胞由来エクソソームの血中からの速やかな消失はマクロファージが関与することが考えられます。

血中の半減期は他の数種類のエクソソームでも数分程度と短く、どのエクソソームも血中にとどまる時間は非常に短い可能性があり、エクソソームをDDSとして使用する際にはこの点を考慮する必要があると考えられています。

 

青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範

 

参考文献:
1)Clayton A, Turkes A, Dewitt S, Steadman R, Mason MD, Hallett MB. Adhesion and signaling by B cell-derived exosomes: the role of integrins. FASEB J. 2004; 18: 977-979.
2)Sun D, Zhuang X, Xiang X, Liu Y, Zhang S, Liu C, Barnes S, Grizzle W, Miller D, Zhang HG. A novel nanoparticle drug delivery system: the anti-inflammatory activity of curcumin is enhanced when encapsulated in exosomes. Mol Ther. 2010;18 :1606-1614.
3)Zhuang X, Xiang X, Grizzle W, Sun D, Zhang S, Axtell RC, Ju S, Mu J, Zhang L, Steinman L, Miller D, Zhang HG. Treatment of brain inflammatory diseases by delivering exosome encapsulated anti-inflammatory drugs from the nasal region to the brain. Mol Ther. 2011; 19: 1769-1779.
4)【エクソソームとDDS】エクソソームの体内動態(解説)  高橋 有己(京都大学 大学院薬学研究科病態情報薬学分野), 西川 元也, 高倉 喜信 Drug Delivery System(0913-5006)29巻2号 Page116-124(2014.03)

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