自己か非自己かを免疫細胞はどのように見極めているのでしょうか?
私たちヒトの細胞のすべてには、「私」であるという自己同一性を示す「目印」(主要組織適合抗原 :MHCクラスI分子)がついています。ヒトの細胞の一つひとつに、同じ印がついています。この印が免疫でいう「抗原」となります。
ヒトと犬や猫などの動物では抗原がまったく違いますし、同じ人間同士でも、親子、兄弟では違う抗原をもっています。
臓器移植の際に問題となる拒絶反応は、人間の臓器であっても異なる抗原(MHC)がついているために、移植された臓器を異物と判断して排除しようと働く反応です。
このMHCは、HLA(ヒト白血球抗原)とも呼ばれ、白血球の型になります。通常は血液型というと、A B Oという赤血球の型が輸血のときなどに重要となりますが、臓器移植の場合はHLA型が一致することが必要です。
また、MHCには自己と非自己を認識するクラスIと、抗体産生の制御を担うクラスⅡという2種類のタイプがあります。
通常は自分の細胞を免疫細胞が攻撃することはないのですが、なんらかの原因で目印を誤認してしまい、自分の組織まで攻撃してしまうのが自己免疫疾患です。
青山メディカルクリニック 松澤 宗範
参考文献:
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・伊東信久:がんと闘うN K T細胞標的治療