カロリー制限により活性化あるいは不活性化されるシグナル分子がいくつか報告されています。
サーチュインやAMPK(AMP-activated protein kinase)、 TOR(target of rapamycin) キナーゼです。
サーチュインやAMPKの共通標的は、ミトコンドリア新生に関与する転写子であるPGC-lαと判明しました。
AMPKによるTORキナーゼ阻害やNAD合成酵素の活性化も見出されています。
これらによる老化制御の可能性が期待されています。
まず、糖尿病の治療薬であるメトホルミン(AMPK 活性化剤)や抗生物質のラパマイシン(TORキナーゼ抑制剤)が注目されています。
個体マウス実験において、低速度メトフォルミン(0.1%)の投与により5.8%の命延長効果がある一方、高濃度メトフォルミン投与(1%)では、むしろ14.4%の歩合短縮が観察されました。
低濃度メトフォルミン投与によりAMPK活性化が確認され、活性化の仕方がカロリー制限時に似ていました。
同様に、ラパマイシン投与によりマウスにおいて9~18%の命延長効果が確認されました。
また、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)はビタミンB3から合成され、NADの前期体物質として重要です。
NMN 投与により効率よくNAD合成が促進され、サーチュインが活性化されます。
老化した多くの臓器でNAD 量が低下していることが判明し、NAD供給そのものが臓器機能維持に重要と考えられます。
青山メディカルクリニック
院長 松澤 宗範
参考文献:医学のあゆみVol.279 No.52021.10.30