エクソソーム

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肝硬変に対するエクソソームの効果

肝硬変に対し間葉系幹細胞由来のエクソソームがマクロファージを介して治療効果を発揮することが明らかになりました。現在、肝硬変に対する効果的な線維化改善や再生促進を促す薬がないため、エクソソームが有効な肝再生療法へとつながる可能性があります。

肝硬変は B 型肝炎、C 型肝炎、脂肪肝、アルコール摂取などが主な原因で⻑期に肝臓が障害を受け、徐々に線維化が進み⻩疸、腹水、肝性脳症、静脈瘤破裂、肝細胞癌などを来たし、悪化すると致死的な疾患です。
肝臓はもともと障害を受けても再生しやすい臓器ですが、肝硬変の状態まで肝障害が進行してしまうと治療法が現時点では肝移植しかありません。
しかし今回、間葉系幹細胞から産生されるエクソソーム、中でもインターフェロンγにて間葉系幹細胞を刺激した後に産生されるエクソソームがマクロファージに影響を与えて、肝硬変に非常に高い治療効果を示すことがマウスモデルで明らかになりました。

インターフェロンγで刺激した間葉系幹細胞から産生されるエクソソームは内部に多くのタンパク質やmiRNAなどの情報伝達物質が含まれており、インターフェロンγの刺激前のエクソソームとは性質が異なることがわかりました。この性質の変わったエクソソームは情報伝達役として、死滅した細胞の除去や線維化の改善など組織修復に重要な働きをするマクロファージに取り込まれます。
そして、これらのマクロファージが肝硬変の障害部位や線維化した部位に集まり、肝硬変の組織修復に重要な働きをしていることが明らかになりました。さらに、エクソソームだけを投与する治療でも、間葉系幹細胞そのものを投与する治療と同等以上の治療効果が得られることもわかりました。

今後エクソソーム内の有効成分を更に選択し、有効成分だけを用いた治療や、有効成分をより濃縮したエクソソームを投与する治療法なども考えられます。

 

青山メディカルクリニック 松澤 宗範

参考文献:
『Small extracellular vesicles derived from interferon-γ pre-conditioned mesenchymal stromal cells effectively treat liver fibrosis 』
著者:Suguru Takeuchi, Atsunori Tsuchiya, Takahiro Iwasawa, Shunsuke Nojiri, Takayuki Watanabe, Masahiro Ogawa, Tomoaki Yoshida, Katsunori Fujiki, Yuta Koui, Taketomo Kido, Yusuke Yoshioka, Mayu Fujita, Junichi Kikuta, Tohru Itoh, Masaaki Takamura, Katsuhiko Shirahige, Masaru Ishii, Takahiro Ochiya, Atsushi Miyajima, Shuji Terai doi: 10.1038/s41536-021-00132-4

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