藤田医科大学は真皮幹細胞が分泌するエクソソームに含まれるタンパク質ANP32Bが、皮膚のコラーゲン産生に関係していることを発見し、この成分が加齢によって減少することで、皮膚のコラーゲン産生が低下することを明らかにしました。
エクソソームは細胞から分泌される小胞で、タンパク質やmiRNAなどをエクソソームに内包して、細胞間の情報伝達として機能しています。エクソソームを取り込んだ細胞では遺伝子発現など細胞の機能に変化が起こります。
幹細胞由来のエクソソームには、組織の修復や炎症を抑制する効果が高く、再生医療で応用されていますが、真皮幹細胞が分泌するエクソソームに関する報告はあまりありませんでした。
そして今回研究グループは、真皮幹細胞が分泌したエクソソームを添加して線維芽細胞を培養し、コラーゲン産生への影響を調べました。
その結果、線維芽細胞はエクソソームを取り込み、真皮の主要成分であるⅠ型コラーゲンの産生が高まることが判明しました。
線維芽細胞のコラーゲン産生を促進するメカニズムを明らかにするため、真皮幹細胞由来エクソソームのプロテオーム解析を行い、真皮幹細胞由来エクソソームに特徴的な74種類のタンパク質が同定されました。
そしてその中でコラーゲン合成シグナルの一つに関連があるAcidic Nuclear Phosphoprotein 32 Family Member B(ANP32B)と呼ばれるタンパク質に着目し、ANP32Bの発現を低下させた真皮幹細胞を作成し、その細胞が分泌したANP32Bが含まれていないエクソソームを線維芽細胞に取り込ませました。
その結果、ANP32Bが含まれないエクソソームを取り込んだ線維芽細胞は、ANP32Bが含まれたエクソソームを取り込んだ線維芽細胞に比べ、コラーゲン産生が低いことが判明しました。
このことから真皮幹細胞がANP32Bをエクソソームを使って線維芽細胞に届けることで、線維芽細胞のコラーゲン産生を促進していることが明らかになりました。
真皮幹細胞は加齢に伴ってその数が減少することがわかっており、真皮幹細胞由来エクソソームの量も加齢に伴って減少してしまうと考えられました。
そこで研究グループは、加齢に伴い真皮幹細胞におけるANP32Bの発現がどのように変化するのか解析しました。
その結果、20代の皮膚の真皮幹細胞に比べて、60代の皮膚の真皮幹細胞においてANP32Bの発現が低くなっていたことが判明しました。
このことから、真皮幹細胞由来エクソソームに含まれるANP32Bの量も加齢によって減少し、真皮幹細胞由来エクソソームの機能が低下してしまうと考えられました。
そのため、真皮のコラーゲン産生を維持していくには、真皮幹細胞の数を維持するだけではなく、ANP32Bの発現低下を防ぎ、真皮幹細胞由来エクソソームの機能を維持することも重要と考えられます。
青山メディカルクリニック 院長 松澤 宗範
参考文献:
1)Enhanced type Ⅰ collagen synthesis in fibroblast by dermal stem/progenitor cell-derived exosomes
著者:眞田歩美、山田貴亮、長谷川靖司、石井 佳江、長谷部 祐一、岩田 洋平、有馬豪、杉浦一充、赤松浩彦、