【医師解説】がんについて ④免疫システム

ブログ 松澤宗範医師

非自己を攻撃し排除しているのが免疫細胞です。免疫システムは、自然免疫と獲得免疫で構成されています。自然免疫は生まれつき備わっている防衛部隊で、獲得免疫は生まれてから経験を通して備えていく特殊部隊です。免疫は不審者の侵入を防ぐセキュリティーシステムで侵入を阻止するために二重のガードがなされています。
まず、異物を阻止する最前線にいる部隊が自然免疫です。外部から侵入しにくいように強固な皮膚で防ぎ、鼻や口、胃腸などには免疫細胞を配置して厳しくチェックしています。これを突破し、血液中に入れたとしても、常に免疫細胞が巡回しており、異物は無差別に排除します。しかし、侵入者が強くて免疫細胞がやられてしまうと病気に負けてしまって発病となります。そこで、自然免疫の部隊が苦戦を強いられたときは、特殊部隊である獲得免疫が応援に駆けつけます。

獲得免疫は、自然免疫から応援要請を受けないと動かない部隊ですが、応援要請を受けて隊員たちに攻撃命令が出されると、効果的な戦術で素早く対応して侵入者を排除してしまいます。
なぜこのような戦術が取れるのかというと、自然免疫の部隊が不特定多数の敵を相手にしているのに対して、獲得免疫は特定の敵に的を絞ってピンポイントに攻めるからです。自然免疫から要請を受ける際に不審者の特徴をきちんと伝えられているため、効果的な武器を作って攻撃をしかけます。この武器は、個々の攻撃相手に合わせて作られるオーダーメイドで、標的が変われば武器も変わる仕組みです。また、次の襲撃に備えて万全の体制を整えるのも、獲得免疫の大きな仕事です。そこで、侵入者の特徴を分析して記憶し、保存します。こうしておけば、再び侵入者が襲ってきてもすぐに特徴を照合でき、素早く武器を量産して効率良く撃退できます。

        青山メディカルクリニック 松澤 宗範

参考文献:
・南野昌信 : ヤクルト本社中央研究所トピックス2 経口免疫寛容と腸内細菌叢アレルギー
56, 549-556, 2007
・坂口志文 : 制御性T細胞による新しい免疫制御法の開発免疫難病・感染症等の先進医療技術
・Gozdz J. Holbreich M. Metwali N, et al.:Amish and Hutterite Environmental Farm Products Have
Opposite Effects on Experimental Models of Asthma.Ann Am Thorac Soc.2016; 13 Suppl 1: 599
・伊東信久:がんと闘うN K T細胞標的治療

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