エクソソームに内包されるmiRNAの存在が数多く報告されており、膵癌においてもいくつかの発現異常が認められています。
miR-21 は健常者と比べて膵癌患者で発現亢進し、全生存期間と抗癌剤治療耐性にかかわる因子でした。
また、miR-17-5pとともに miR-21は膵癌患者血清エクソソーム中に高発現し、健常人のみならず慢性膵炎患者との鑑別に有用との報告もあります。さらにmiR-17-5p の高発現は、転移の有無、Stage進行との相関が認められました。
別の報告では、血漿EVs内のmiR-10b、miR-21、miR-30C、miR-181aの発現は慢性膵炎患者と比べ膵癌患者において有意に上昇し、これらのmiRNA は膵癌術後6ヵ月で健常者と同等レベルまで減少することがわかりました。この検討では、CA19-9やGPC1の発現よりも、これらのmiRNAのほうが慢性膵炎と癌の鑑別に有効であったとされています。Madhavanらは血清エクソソーム中のmiR-1246、miR-3976、miR-4306、miR-4644の発現は膵癌患者で上昇し、これらの併用は、Stage 0- I を含めた膵癌診断能の向上に寄与すると報告しました。
そして、CD44 や EpCAM など癌幹細胞マーカーとの併川により、診断感度・特異度ともにさらに上昇しています。
その他、miR-451a、miR-196aなどが血液中エクソソーム内に高発現し、膵癌における体液診断の標的としての有用性が示されています。
青山メディカルクリニック院長 松澤宗範
参考文献:胆と膵 (0388-9408)42巻8号 Page717-724(2021.08)
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