老化とは、加齢に伴う細胞・臓器の機能低下による老年期の個体の衰退・機能喪失から最終段階の死に至るまでを意味します。
Strehler は老化の特徴を4項目(①普遍性②内在性③進行性④有害性)と定義しましたが、近年、老化の再定義の必要性が議論されつつあります。まず、老化が制御できる可能性が指摘され、老化が一方通行で進行するものと断定できなくなりつつあります。
老化の尺度のひとつに、染色体末端構造テロメアがあります。
テロメアは細胞が老化するとともにテロメアの長さは短くなるため老化時計とよばれます。ヒト血液細胞のテロメア長の計測が可能となり、多くの癌に関して、テロメア長が短い人ほど癌に罹患しやすいことが判明しました。
さらに、テロメア最短群の冠動脈性心疾患と脳血管疾患の相対リスクはともに 1.42と判明し、統計学的な有意差があることが確認されました。動脈硬化性疾患そのものや糖尿病、心不全などでもテロメア長の短縮が病状悪化の要因であると判明しました。
興味深いことに、テロメア長の短縮は感染症罹患率やうつ病患者におけるうつ期間の長さ、酸化ストレス、炎症マーカー(IL-6)などとも相関することがわかっています。
テロメア長を維持する体機構として、テロメアDNA 配列の付加を可能とする酵素テロメラーゼが見出されています。
しかし、テロメラーゼの異常活性化による癌化は以前より危惧されており、アメリカで販売されているテロメラーゼ活性化サプリは、発癌性の危険が指摘されています。一方生活習慣改善によるテロメア長維持は有効と考えられており、テロメア・エフェクトと呼ばれています。テロメラーゼを過剰に活性化することは癌化のリスクを伴いますが、生活習慣改善による適度な活性化は健康効果があると思われます。
参考文献:医学のあゆみVol.279 No.52021.10.30
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