【医師解説】がんについて⑥獲得免疫

ブログ 松澤宗範医師

獲得免疫は、異物の特徴を認識し効率良く攻撃する特殊部隊です。
自然免疫である好中球やマクロファージが、異物の抗原の情報を樹状細胞に伝えます。免疫細胞同士は、「サイトカイン」といわれる情報伝達物質を通じて連絡を取り合っています。樹状細胞は、異物を貪食し、抗原の一部を獲得免疫のリンパ球であるヘルパーT細胞に提示します。それと同時に、T細胞の働きを活性化したり、働きを抑えたりしてコントロールするなど、免疫システムの司令塔の役目を果たしています。
こうして、樹状細胞が攻撃対象となる抗原の情報を得ると、リンパ節に移動します。リンパ節には未熟なT細胞やB細胞が待機しており、樹状細胞が抗原の情報を教えます。
すると、未熟なT細胞やB細胞は活性化して成熟し、殺傷力の強いキラーT細胞や、キラーT細胞の働きをバックアップするヘルパーT細胞、抗体を作るB細胞、抗原の情報を記憶しておく記憶T細胞や記憶B細胞などへと、それぞれ変化します。
獲得免疫は大きく分けると、B細胞が主役となって働く「液性免疫」と、T細胞が主役となって働く「細胞性免疫」の2つの部隊があります。
液性免疫は、ヘルパーT細胞から指令を受けたB細胞がサイトカインによって活性化し抗体を作ります。B細胞は、抗原の情報を記憶するため、素早くその抗原に合った抗体を作ることができます。
これに対して細胞性免疫は抗体は作らずに、キラーT細胞やNKT細胞などが直接異物を攻撃します。
樹状細胞による抗原提示で異物の情報を受け取ったヘルパーT細胞は、インターロイキンやインターフェロンなどのサイトカインを放出します。これによってキラーT細胞が活性化し、異物を攻撃するようになります。そして、この情報は記憶T細胞によって記憶されます。
こうして、次に同じ敵が侵入してきたときに、素早く攻撃ができるように備えます。
1回目は異物を認識していませんから戦い方が分からずに負けてしまいますが、2回目からは異物の情報を記憶していますので、素早く対応することができるのです。

        青山メディカルクリニック 松澤 宗範

参考文献:
・南野昌信 : ヤクルト本社中央研究所トピックス2 経口免疫寛容と腸内細菌叢アレルギー
56, 549-556, 2007
・坂口志文 : 制御性T細胞による新しい免疫制御法の開発免疫難病・感染症等の先進医療技術
・Gozdz J. Holbreich M. Metwali N, et al.:Amish and Hutterite Environmental Farm Products Have
Opposite Effects on Experimental Models of Asthma.Ann Am Thorac Soc.2016; 13 Suppl 1: 599
・伊東信久:がんと闘うN K T細胞標的治療

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