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【医師解説】膵癌におけるエクソソームを用いた診断・治療への応用 ⑤long non-coding RNA (IncRNA)

ブログ 松澤宗範医師

機能性RNA (non-coding RNA: ncRNA)の中でも200塩基以上の長鎖RNAをIncRNA と総称します。
IncRNAは、転写制御、遺伝子発現の制御、miRNAの活性を調節させるなど、多彩な作用機序を介し疾患の病態成立に寄与します。近年その機能が徐々に明らかとなりつつありますが、依然情報はまだ少ないです。
IncRNAの中には血液中エクソソーム内で高発現するものがあり、リキッドバイオプシーとして有用なことが報告されています。IncRNAの一つであるUCA1は、膵癌患者血清から抽出したエクソソーム内に高発現し膵癌診断に寄与します。また、UCA1は miR-96-5p発現・活性抑制を介し、低酸素下における血管新生および膵癌増殖促進効果を有します。
MALATI と CRNDEは膵癌細胞において、抗癌剤抵抗性・腫瘍血管新生促進作用と増殖・浸潤能促進作用を有し、癌遺伝子として働きます。これら2種類のIncRNAは、血清EVs中に高発現することが確認されています。また、IncRNA-Sox2ot は癌幹細胞性などの形質機得に関与し、血漿エクソソーム中における発現上昇は予後不良因子となることが示されています。Highly Up-regulated in Liver Cancer(HULC)も膵癌患者血清エクソソーム中に高発現することが示されています。
発現意義や機能の多くが依然未解明である IncRNA の中でも、血液中においていくつかの発現が確認されており、新しいバイオマーカーとして期待されます。

青山メディカルクリニック院長 松澤宗範

参考文献:胆と膵 (0388-9408)42巻8号 Page717-724(2021.08)

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