【医師解説】がんについて ⑨がん細胞も利用するサイトカインとエクソソーム

ブログ 松澤宗範医師

サイトカインとエクソソームはがん細胞が生き延びるために深く関わっています。
がん細胞は必要な栄養と酸素を得るために、自身へと血管を新生し引き寄せます。がん細胞の血管新生に細胞増殖因子やサイトカイン、エクソソームが利用されています。
エクソソームは細胞が出す特殊なメッセージ物質です。がん細胞はこのエクソソームを利用して免疫から逃れていることが最近の研究で明らかになってきました。
エクソソームは細胞から放出されるカプセル状の物質で、中にはさまざまなメッセージ物質が詰め込まれています。
がん細胞はこのカプセルを利用して、血管を引き寄せる場合はエクソソームの中に「血管を伸ばしなさい」という指令を込めたメッセージ物質を詰め込んで、血管を作っている細胞へと送ります。
すると、その指令を受け取った細胞は、がん細胞のもとへと血管を伸ばしていきます。
また、免疫細胞の働きを抑える場合は、「私に攻撃するのをやめて」というメッセージ物質を中に詰め込んで免疫細胞へと送ります。
その結果、免疫細胞はがん細胞を味方と認識し、攻撃するのをやめてしまいます。こうしたメカニズムが分かってきたことで、エクソソームを逆に利用したがん治療の研究も進められています。
このようにがん細胞は免疫細胞の攻撃を逃れて増殖していきます。さらに進行してくると、がんの組織内でもがん細胞自体が変異していくため、免疫によって排除したり、治療を行ったりしても治すことが困難になっていきます。

       青山メディカルクリニック 松澤 宗範

参考文献:
・南野昌信 : ヤクルト本社中央研究所トピックス2 経口免疫寛容と腸内細菌叢アレルギー
56, 549-556, 2007
・坂口志文 : 制御性T細胞による新しい免疫制御法の開発免疫難病・感染症等の先進医療技術
・Gozdz J. Holbreich M. Metwali N, et al.:Amish and Hutterite Environmental Farm Products Have
Opposite Effects on Experimental Models of Asthma.Ann Am Thorac Soc.2016; 13 Suppl 1: 599
・伊東信久:がんと闘うN K T細胞標的治療

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